九州の北玄関として古くから文化と交易の要地であった福岡県。
博多の港町としての賑わいと、宗像の神話、英彦山や平尾台に代表される自然の雄大さが同居する土地である。
世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」や「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群をはじめ、太宰府天満宮、柳川の水郷、糸島の海岸線など、歴史と自然が交差する名所が数多く存在する。
この記事では、福岡県の観光地・名所・名刹・百選・温泉を地図とともに詳しく紹介し、その魅力を存分に伝える。
福岡の観光地と名所と穴場─神宿る島や英彦山に海の中道と太宰府天満宮。博多・糸島・北九州・柳川を巡る歴史と信仰と絶景。

世界遺産──産業革命と古代信仰が息づく「鉄と海の記憶」
福岡県には二つの世界遺産がある。
ひとつは、近代化日本の幕開けを象徴する「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」である。
構成資産の一部である「三池炭鉱・三池港」(大牟田市)と「官営八幡製鐵所」(北九州市)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて日本の産業発展を牽引した。
かつて炭鉱夫たちが汗を流した坑道跡や鉄鋼の街の面影は、近代国家へと歩んだ日本のエネルギーの源を感じさせる。

もうひとつの世界遺産が「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」である。
宗像市の沖ノ島は、九州本土から約60キロ離れた玄界灘に浮かぶ神の島であり、古代より女人禁制を守り続けてきた。

島全体が宗像大社沖津宮の境内地とされ、古代の国家祭祀の痕跡を今に残す。
宗像大社は、沖津宮・中津宮・辺津宮の三宮から成り、海の安全を祈願する信仰の中心地として崇敬を集める。
出土した金銅製品や鏡、勾玉は国宝に指定されており、東アジアの交流史を物語る貴重な文化遺産である。

この二つの世界遺産は、産業と信仰という異なるベクトルで日本の歴史を形づくってきた。
鉄の炎と神の祈り、いずれも人々の営みと自然が密接に結びついた福岡の原点を映し出している。
名勝・百景・天然記念物──水と森が織りなす筑紫の自然美
福岡県の自然は、北部九州の中でも特に多彩である。
県東部の英彦山は日本百景の一つに選ばれた霊山で、標高1,199メートルの山頂からは筑豊平野を一望できる。
修験道の聖地として古くから崇敬を集め、山伏たちが修行に励んだ地でもある。
山腹には英彦山神宮が鎮座し、杉木立に包まれた参道は神秘的な空気に満ちている。

また、朝倉市の「古処山ツゲ原始林」と糟屋郡の「立花山クスノキ原始林」は、国の特別天然記念物に指定されている。
古処山の山肌を覆うツゲの森は国内最大規模を誇り、立花山のクスノキ群は樹齢千年を超える巨木が生い茂る。
これらの原始林は、九州の原生的な自然を今に伝える貴重な生態系である。

さらに福岡県南部には、日本三大カルストの一つ「平尾台」が広がる。
石灰岩が点在する高原には、風に削られた奇岩や鍾乳洞が数多く存在し、春には草花、秋にはススキが揺れる風景が美しい。
カルスト台地の下には「千仏鍾乳洞」や「牡鹿鍾乳洞」などがあり、地底探検のような体験ができるのも魅力だ。

そして柳川市の「水郷柳河」は国の名勝に指定されている。
江戸期に整備された水路網が町中を縦横に流れ、今もどんこ舟での川下りが楽しめる。
白壁の町並みと水面に映る柳の緑は、まるで古都の絵巻を見るような情景である。

百選に輝く福岡の名所──海・城・桜に見る多彩な風景
福岡県には多くの観光地が全国の「百選」に選ばれている。
まず、「日本の渚百選」には福岡市の海の中道と、糸島市の二見ヶ浦がある。
海の中道は玄界灘と博多湾に挟まれた砂州に位置し、国営海の中道海浜公園として整備されている。
季節の花々やマリンワールド水族館、海岸線の自転車道など、自然とレジャーが融合した観光地だ。

一方、糸島の二見ヶ浦は、夕日と夫婦岩で知られる福岡屈指の絶景スポットである。
白い鳥居の向こうに沈む夕陽が海面を染め、カメラ愛好家やカップルの人気を集める。

城跡では、日本百名城に福岡城(舞鶴公園)と大野城が選出されている。
福岡城は黒田官兵衛の子・長政が築いた城で、現在は石垣と濠が美しく残る公園として市民に親しまれている。
春には約1,000本の桜が咲き誇り、夜にはライトアップされる。
大野城は7世紀に築かれた古代山城で、太宰府防衛の要として国家的に重要な役割を担った。

続日本百名城には小倉城(北九州市)、水城(大野城市)、久留米城(久留米市)、基肄城(筑紫野市)が指定されており、いずれも九州の戦略拠点として歴史を刻んできた。


桜の名所としては、福岡市の「西公園」が日本さくら名所100選に選ばれている。
博多湾を一望できる高台に約1,300本の桜が咲き、花見シーズンには多くの人で賑わう。
都市と自然が調和する福岡ならではの桜景観だ。
名刹と温泉──太宰府天満宮と筑紫の湯に息づく祈り
福岡県の名刹といえば、まずは全国の天満宮の総本宮である「太宰府天満宮」である。
学問の神・菅原道真公を祀る神社として全国から受験生が訪れる。
広大な境内には樹齢千年を超える御神木「飛梅」があり、春には鮮やかな花を咲かせる。

周辺には九州国立博物館や梅ヶ枝餅の茶店が立ち並び、歴史と文化を体感できる観光拠点となっている。
太宰府の近くには、古代九州を治めた「大宰府政庁跡」があり、当時の官僚都市の遺構が整然と残る。

また、嘉穂郡桂川町の「王塚古墳」は彩色壁画を持つ装飾古墳として知られ、古代九州の文化交流の証でもある。
温泉地としては、筑後川沿いの「原鶴温泉」や「船小屋温泉」、北九州の「脇田温泉」などがある。
特に原鶴温泉は“美肌の湯”として女性に人気で、筑後川の流れを眺めながら湯浴みを楽しめる。
久留米の「筑後川温泉」は歴史ある湯治場で、地元食材とともに旅情を味わえる。
また、八女市の「黒木の大藤」は国の天然記念物に指定されており、樹齢600年を超える藤棚が春に一面を紫に染める。
その幻想的な光景はまるで花の滝のようで、毎年多くの観光客を魅了している。

その他の見どころ──博多・糸島・北九州に息づく現代と伝統
福岡といえば、アジアに開かれた国際都市・博多の存在を忘れてはならない。
博多祇園山笠や博多どんたく港まつりなど、歴史と祭りが共存する街だ。
屋台文化や中洲の夜景も全国的に有名である。

西の糸島エリアは、今や九州屈指の人気観光地となった。
青い海と白い砂浜、カフェや雑貨店が並ぶ海岸線はフォトジェニックな風景として若者を中心に注目を集めている。
北九州市では、門司港レトロ地区が人気だ。
明治から昭和初期の赤煉瓦建築が立ち並び、鉄道・港湾都市としての歴史を感じさせる。
夜はライトアップされた街並みがロマンチックで、観光客に好評である。

こうして見ていくと、福岡県は古代の祈りから近代産業、そして現代都市の躍動までが一つの県に凝縮された場所である。
神と人、海と山、伝統と未来が交差する“九州の縮図”ともいえるだろう。

English page(Fukuoka prefecture. Map of sightseeing spots)
(外部リンク)福岡県のホームページ
(外部リンク)福岡県観光情報 クロスロードふくおか
















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