東京に隣接する神奈川県は、海と山の自然美、古都・鎌倉の歴史遺産、国際都市・横浜の近代的な街並みを併せ持つ多彩な県である。
箱根温泉や江の島、三渓園、鎌倉大仏、そして夜景で知られる横浜みなとみらいなど、訪れるたびに異なる表情を見せる観光地が点在している。
古都の静けさと港町の活気、温泉のぬくもりと海風の爽快さが交錯する神奈川の旅は、日本の多様な魅力を凝縮した一枚の風景画のようである。
本稿では、神奈川県の名所・名刹・百選・地図をもとに、自然と文化が調和する観光地の魅力を徹底紹介する。
神奈川県観光ガイド──箱根温泉・江の島・鎌倉大仏。名所・名刹・百選・温泉の定番と穴場を掲載。絶景・文化・地図で辿る旅路

名勝・日本百景・特別史跡──箱根・江の島・三渓園に見る自然と文化の融合
神奈川県は、古来より東海道の要衝として栄え、名勝や文化財の宝庫である。
日本二十五勝の一つに選ばれている箱根温泉は、火山活動によって生まれた全国屈指の温泉郷で、箱根町一帯に温泉地が点在する。
箱根湯本、宮ノ下、強羅、芦ノ湯などを含む「箱根二十湯」と総称され、それぞれ異なる泉質と風情を楽しめる。
芦ノ湖を望む絶景露天風呂、富士を望む温泉宿などが点在し、四季を通じて多くの観光客が訪れる。
箱根町塔之澤付近
一方、江の島は日本百景に数えられ、湘南海岸を代表する観光地である。
相模湾に突き出た陸繋島で、古くから信仰の島として栄え、江島神社や岩屋洞窟などが点在する。
頂上の江の島シーキャンドルからは富士山と夕日の絶景が広がり、近代的なリゾートと古社の静けさが調和している。

国指定の名勝も多く、横浜市の三渓園はその代表格である。
実業家・原三溪によって明治時代に開園された広大な日本庭園で、京都や鎌倉から移築された歴史的建造物17棟を擁する。
四季折々の花と池泉回遊式庭園が見事に調和し、都市の喧噪を忘れさせる空間である。
同じく横浜市の山手公園は、日本初の洋式公園であり、日本のテニス発祥の地でもある。
港町らしい異国情緒に包まれ、近隣の外交官の家や山手西洋館群とあわせて観光客に人気だ。

鎌倉市内には、円覚寺・建長寺・瑞泉寺の三庭園が名勝に指定されている。
円覚寺の妙香池、建長寺方丈庭園、瑞泉寺の鎌倉時代の庭園は、禅の精神と自然が融合した鎌倉文化の象徴である。
瑞泉寺は「花の寺」としても知られ、四季を通じて花々が咲き誇る。


百選の絶景──滝・桜・城・渚に彩られた神奈川の自然美
神奈川県には、全国的に知られる景勝地が「日本百選」として多数選定されている。
まず、「日本の滝百選」には早戸大滝(相模原市)と洒水の滝(山北町)が名を連ねる。
早戸大滝は落差50メートルの壮大な滝で、「幻の滝」と呼ばれるほど到達が難しい秘境にある。

洒水の滝は三段から成り、一の滝が69メートルと最も高く、古来より修験者の修行場としても知られている。

「日本さくら名所100選」では、衣笠山公園(横須賀市)、小田原城址公園(小田原市)、神奈川県立三ツ池公園(横浜市)の三か所が選ばれている。
衣笠山公園は丘陵地に約2000本の桜が咲き乱れ、横須賀港を望む桜の名所として名高い。
小田原城址公園では天守と桜の競演が見られ、夜のライトアップは幻想的である。
三ツ池公園は横浜市民の憩いの場で、池の周囲を囲む桜並木が春を彩る。

「日本百名城」には小田原城(小田原市)が指定されており、北条氏の本拠地として戦国期に大いに栄えた。
現在の天守は復興天守閣だが、堀や石垣が良好に残り、当時の堅固な城郭構造を今に伝える。

続日本百名城には、小机城(横浜市)と石垣山城(小田原市)が選定されている。
小机城は太田道灌ゆかりの城で、丘陵に築かれた中世山城として貴重な遺構を残す。

石垣山城は豊臣秀吉が小田原征伐の際、わずか80日で築いた「一夜城」として知られ、現在は石垣山一夜城歴史公園として整備されている。
また、「日本の渚百選」には七里ヶ浜海岸(鎌倉市)、照ヶ崎海岸(大磯町・こゆるぎの浜)、葉山海岸(葉山町)が指定されている。
照ヶ崎海岸はウミガメの産卵地としても知られ、葉山海岸は皇室ゆかりの保養地として格式高いリゾート地である。
七里ヶ浜はサーファーに人気のスポットで、富士山と江の島を一望する絶景の海岸。

名刹・古社・温泉──鎌倉仏教と箱根・湯河原の名湯
神奈川県の宗教文化を語る上で欠かせないのが鎌倉の古寺群である。
鎌倉は鎌倉時代に禅宗や浄土宗などの新仏教が興隆した地であり、多くの寺社が現存する。
その中心にあるのが鶴岡八幡宮で、源頼朝が創建した鎌倉武士の守護神社である。
鎌倉の象徴的存在であり、初詣や祭礼では多くの参拝客が訪れる。
鶴岡八幡宮(鎌倉市)
高徳院(鎌倉大仏殿)の大仏は、高さ約11メートルの阿弥陀如来坐像で、国宝に指定されている。
青銅製の姿は鎌倉の風景に溶け込み、日本を代表する仏像の一つである。

長谷寺は「あじさい寺」として親しまれ、6月には約2500株のアジサイが咲き誇る。
山上からは由比ヶ浜を一望でき、四季を通じて観光客で賑わう。

温泉地としては、県西部の箱根温泉が圧倒的な人気を誇る。
箱根二十湯に代表される多彩な温泉は、観光と癒しの両面で名高い。
さらに、静岡県との県境に位置する湯河原温泉も忘れてはならない。
夏目漱石や芥川龍之介、国木田独歩ら文豪に愛された文学の湯であり、古くから湯治場として栄えた。

その他の観光地──横浜・猿島・近代と自然の共演
神奈川県のもう一つの顔は、国際都市・横浜である。
みなとみらいの高層ビル群、赤レンガ倉庫、横浜中華街など、異国情緒と都市の洗練が融合した観光地が広がる。
夜景の美しさは日本屈指で、観覧車「コスモクロック21」から望むベイエリアの光景は圧巻である。

また、猿島(横須賀市)は東京湾に浮かぶ唯一の自然島で、旧日本軍の要塞跡が残る無人島として人気だ。
赤レンガのトンネルや砲台跡が苔むし、まるでジブリ映画の世界に迷い込んだような幻想的な風景が広がる。

近代と自然、信仰と歴史、温泉と海。
これらすべてが調和する神奈川県は、日本の縮図ともいえる魅力を持つ県である。

(外部リンク)神奈川県のホームページ
(外部リンク)神奈川県公式観光サイト「観光かながわNOW」
















