岐阜県の観光地と地図:“合掌と戦国”――白川郷から岐阜城、飛騨高山と木曽三川。名所と穴場をめぐる。

 

岐阜県の観光地と地図:“合掌と戦国”――白川郷から岐阜城、飛騨高山と木曽三川。名所と穴場をめぐる。

本州のほぼ中央に位置する岐阜県は、太平洋にも日本海にも面していない内陸県でありながら、実に豊かな地形と歴史文化を抱えている。

日本三大秘境のひとつとされる白川郷をはじめ、名勝・天然記念物・百選に名を連ねる名所旧跡が県内各地に点在し、訪れる者に日本の原風景と、深い精神文化を同時に体験させてくれる土地である。

 

岐阜県の観光地と地図:“合掌と戦国”――白川郷から岐阜城、飛騨高山と木曽三川。名所と穴場をめぐる。

岐阜県の観光地・名所一覧・地図
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世界遺産・白川郷──合掌造りが語る山里の記憶

岐阜県が誇る世界遺産は、言わずと知れた「白川郷・五箇山の合掌造り集落」である。

正式には富山県南砺市の五箇山と、岐阜県大野郡白川村白川郷の2地域が共同で登録されており、いずれも庄川流域の山間部に築かれた集落である。

 

合掌造りとは、急勾配の茅葺き屋根が両手を合わせた形に似ていることからその名がついた。

この形状は豪雪地帯に適応しつつ、養蚕業のための広い屋根裏空間を提供するという機能性を兼ね備えている。

白川郷には現在も60棟以上の合掌造り住宅が残っており、厳しい自然と共存してきた人々の知恵と文化の結晶である。

 

白川郷はまた、「日本三大秘境」の一つにも数えられ、世界遺産であると同時に、俗世から隔てられた原始的な美しさを保つ地として、訪れる人々を魅了している。

白川郷
白川郷

岐阜県の名勝・特別天然記念物──地形が語る物語

岐阜県には国指定の名勝として、「鬼岩」(可児郡御嵩町・瑞浪市)と「霞間ヶ渓」(揖斐郡池田町)の二つがある。

鬼岩は花崗岩が長年の侵食によって形成した奇岩・巨石群で、秋には紅葉の名所としても知られる。

 

鬼岩公園

霞間ヶ渓は1500本を超える桜が山肌を彩る花見の名所であり、江戸時代からの治山と植樹の歴史が今も風景に残っている。

霞間ヶ渓の桜
霞間ヶ渓の桜

さらに特別天然記念物としては、「根尾谷断層」「根尾谷の菊花石」「石徹白のスギ」が挙げられる。

根尾谷断層は1891年の濃尾地震によって形成された日本最大級の活断層であり、全長約80km、地表の高低差は最大6mにも及ぶ。

今なお観察可能な断層露頭は地学教育の貴重な資料とされている。

 

根尾谷断層

 

「日本百景」に恵那峡が、「日本二十五勝」には長良川養老の滝が選出されており、岐阜の自然美が全国的に評価されてきた証である。

また、長良川は「日本三大清流」の一つにも数えられている。

養老の滝
養老の滝

岐阜の百選──滝・桜・名城に刻まれた時間の重み

岐阜県では、「日本の百選」に多数の観光地が選ばれている。

滝百選には、養老の滝養老町)、阿弥陀ヶ滝郡上市)、根尾の滝下呂市)、平湯大滝高山市)が名を連ねる。

平湯大滝
平湯大滝

なかでも阿弥陀ヶ滝は落差60mを誇り、霊場としても信仰を集めてきた神聖な場所である。

 

桜の名所百選には、「霞間ヶ渓」のほか、「新境川堤・百十郎桜」(各務原市)、「根尾谷・淡墨公園」(本巣市)が挙げられる。

特に淡墨桜は樹齢1500年を超えるエドヒガンの古木で、「日本五大桜」のひとつとされる。

満開のときは淡いピンク、散り際には淡墨色に変わる花びらが幻想的で、毎年多くの観桜客を集める。

淡墨桜
淡墨桜

「日本百名城」には、岐阜城岐阜市)と岩村城恵那市)が選出されている。

織田信長が天下統一の足がかりとした金華山の上に立つ岐阜城と、女城主・おつやの方の逸話でも知られる岩村城は、いずれも戦国時代の面影を色濃く残す名城である。

岐阜城
岐阜城

続百名城には、郡上八幡城中津川苗木城可児市美濃金山城大垣城が登録されており、合計6城が県内の百名城リストに名を連ねている。

郡上八幡城(郡上市)
郡上八幡城(郡上市)
苗木城跡
苗木城跡
大垣城
大垣城

飛騨の古社寺と温泉──静けさと癒しが交差する土地

岐阜県の温泉地としてまず挙げられるのが「下呂温泉」である。

飛騨川の流域に広がるこの温泉地は、草津・有馬と並ぶ「日本三名泉」のひとつとして古くから湯治客に親しまれてきた。

泉質は滑らかなアルカリ性単純泉で、肌がすべすべになる「美人の湯」としても名高い。

下呂温泉と飛騨川(下呂市)
下呂温泉と飛騨川(下呂市)

 

ほかにも、奥飛騨温泉郷新穂高温泉など、山深い地に湧き出る湯が数多く存在する。

とくに新穂高ロープウェイから眺める北アルプスの大パノラマは、四季を問わず圧巻である。

新穂高ロープウェイ
新穂高ロープウェイ

飛騨高山には、江戸時代からの町並みが保存されており、伝統的建築物群保存地区に指定されている。

歴史的建造物と民芸品店、酒蔵などが並ぶ「古い町並み」は、まるで時が止まったかのような風情がある。

飛騨高山(岐阜県高山市)
飛騨高山(岐阜県高山市)

また、虎渓山永保寺多治見市)は、南北朝時代創建の古刹であり、国の名勝に指定された池泉回遊式庭園を有する。

山中の静寂と美しい庭園の調和は、訪れる者に深い癒しを与える。

虎渓山永保寺庭園
虎渓山永保寺庭園

岐阜のもう一つの魅力──内陸県が育んだ“水”

岐阜県は海に面していないにもかかわらず、水に関する資源と文化が極めて豊富である。

世界最大級の淡水魚専門水族館「アクア・トト・ぎふ」(各務原市)は、長良川の自然や世界の河川をテーマにした展示で注目を集めている。

「川と共にある暮らし」を感じられる施設としては非常に希少であり、都市型の水族館とはまったく異なる魅力を放っている。

木曽三川と濃尾平野(左上が揖斐川、右上から中央左が長良川、左下から中央右が木曽川)
木曽三川と濃尾平野(左上が揖斐川、右上から中央左が長良川、左下から中央右が木曽川)

地図に刻まれた岐阜──自然と文化が交差する旅路

岐阜県は、地図を眺めるだけではその奥深さが伝わらない場所である。

山と渓谷、滝と温泉、桜と石垣、そして人々が築いてきた家と町並み。

それぞれが点ではなく、線と面でつながり、豊かな物語を形づくっている。

内陸の静けさの中に秘められた力強さ、それが岐阜の本質である。

 

岐阜県の観光地・名所一覧・地図
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(外部リンク)岐阜県のホームページ

(外部リンク)岐阜県観光連盟「ぎふの旅ガイド」