三重県は、古代信仰の象徴である伊勢神宮を筆頭に、熊野古道の霊性、伊賀忍者の歴史、そして伊勢志摩のリアス海岸や鈴鹿山脈など、多彩な自然と文化が融合する県である。
伊勢志摩国立公園の美しい海岸線、滝や渓谷に彩られた山々、近代的なアミューズメント施設まで、伝統と現代が絶妙に調和している。
この記事では、世界遺産から名勝、百選、名刹や温泉まで、三重県の観光名所を地図とともに徹底的に紹介していく。
神と自然、人の営みが重なり合うこの地の奥深い魅力を感じ取ってほしい。
三重の観光地と名所と穴場|世界遺産・百選・伊勢志摩の絶景を徹底紹介。伊勢神宮・熊野古道・赤目四十八滝・志摩温泉を巡る

世界遺産──「紀伊山地の霊場と参詣道」伊勢路に刻まれた祈りの道
三重県にある世界遺産は「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である熊野古道伊勢路だ。
古来より伊勢神宮から熊野三山を結ぶ信仰の道として、多くの参拝者が歩いたこの参詣路は、自然と祈りが共存する文化景観として高く評価されている。
伊勢路は紀伊半島の東岸を南北に縦断し、荷坂峠、ツヅラト峠、始神峠、馬越峠、八鬼山越えなど、古人の足跡を感じる峠が連なる。
道中には花の窟神社、獅子岩、御船島などの聖地も点在し、それぞれが古代信仰や海の神話と深く結びついている。
特に花の窟神社は日本最古の神社の一つとされ、巨岩そのものが御神体である。
この伊勢路を歩けば、参詣道が単なる交通路ではなく、自然と人間の精神が融合した「祈りの道」であったことを体感できる。
熊野古道の石畳や道標、峠の茶屋跡に残る静けさは、千年以上の時を経ても変わらぬ信仰の記憶を伝えている。

名勝・百景・天然記念物──三重に息づく自然の神秘と風景美
三重県には、国の特別名勝や名勝に指定された景勝地が数多く存在する。
まず、和歌山県境の瀞八丁は「日本の特別名勝」に指定される峡谷である。
吉野熊野国立公園内にあり、エメラルドグリーンの水面を屋形船が進む光景は幽玄そのものだ。
特別史跡には国学者・本居宣長の旧宅が指定されており、江戸の知の象徴として文化史的価値が高い。
瀞八丁木津呂集落周辺
国指定の名勝としては、鬼ヶ城の獅子巌(熊野市)、赤目渓谷(名張市)、三多気の桜(津市)、二見浦(伊勢市)、城之越遺跡(伊賀市)などが挙げられる。
鬼ヶ城は海岸に連なる奇岩群で、荒波が刻んだ自然の造形美が特徴であり、隣接する獅子岩とともに熊野灘の象徴的風景となっている。


赤目渓谷は忍者修行の地として知られ、滝と苔むした岩肌が続く「赤目四十八滝」が日本百景に選出されている。
日本百景には、鬼ヶ城と赤目渓谷のほか、朝熊山と鳥羽湾の眺望も選ばれている。
鳥羽湾は大小の島々が点在するリアス式海岸で、夕暮れに海面が黄金に染まる景観は絶景だ。
また、多気郡の宮川上流にある大杉谷は日本三大渓谷の一つに数えられる。
巨岩と原生林、数多の滝が織りなす壮大なスケールはまさに「日本の秘境」であり、登山者に人気の自然遺産である。

百選に選ばれた三重の名所──渚・滝・桜・城に息づく文化と風土
三重県には全国的に知られる「百選」に選ばれた観光地が数多い。
滝百選には赤目四十八滝、大杉谷の七ツ釜滝、熊野市の布引の滝が選出されている。
七ツ釜滝は複数の滝が連続して流れ落ちる迫力ある景観で、周囲の緑と水音が織り成す自然のリズムが心を癒す。

布引の滝は熊野灘を背景に落ちる白糸のような流れが印象的で、古くから信仰の対象でもあった。
渚百選には二見浦と七里御浜が選ばれている。
二見浦は夫婦岩で有名な伊勢の海岸で、日の出を拝む信仰の地として知られる。
七里御浜は全長22キロにも及ぶ日本最長の砂礫海岸で、黒い丸石が波に光る光景は雄大である。
桜の名所としては、国の名勝にも指定されている津市の三多気の桜と、伊勢市の宮川堤が日本さくら名所100選に選ばれている。
三多気の桜は伊勢本街道沿いに約1500本の桜が咲き誇り、山間の寺と桜並木が織りなす風景はまさに日本の原風景である。

宮川堤の桜は伊勢神宮の外宮近くを流れる清流沿いにあり、古くから「伊勢の花見」として親しまれてきた。
また、伊賀上野城(伊賀市)と松坂城(松阪市)は日本百名城に選ばれ、津城(津市)、田丸城(玉城町)、赤木城(熊野市)、北畠氏館(津市)は続日本百名城に指定されている。

特に赤木城は石垣が完全に残る戦国山城で、朝霧に包まれる姿は幻想的だ。

北畠氏館の庭園は国の名勝に指定されており、戦国時代の武家文化を伝えている。
名刹と名湯──伊勢神宮と湯の山温泉に見る祈りと癒し
三重県の名刹といえば、何といっても伊勢神宮である。
皇室の氏神、天照大神を祀る日本の総氏神であり、すべての神社の頂点に立つ存在だ。
内宮と外宮を中心に125社から構成され、20年ごとに社殿を建て替える「式年遷宮」によって永遠の若さを保っている。
形式的な「世界遺産登録」こそないが、その神聖性と文化的影響力は世界遺産以上の存在感を放つ。
伊勢神宮
伊勢神宮の参拝後には、伊勢市の二見興玉神社や猿田彦神社を巡るのが古来からの習わしである。
志摩半島にはスペインをテーマにしたリゾート「志摩スペイン村」や、真珠養殖の中心地・英虞湾を望む展望台があり、信仰と観光が共存する独自の文化が根付いている。
温泉地としては湯の山温泉が有名で、鈴鹿山脈の山懐に湧く古湯だ。
開湯1300年の歴史を持ち、美肌効果のあるアルカリ泉が特徴である。
志摩の磯部わたかの温泉や鳥羽の安楽島温泉も人気で、海を望む露天風呂からは伊勢湾の水平線が広がる。
伊勢志摩の温泉宿は食と風景が一体化した癒しの空間であり、訪れる者を非日常へと誘う。
その他の見どころ──近代と自然が共演する三重の今
三重県は、歴史遺産だけでなく現代的な観光施設も充実している。
県北部の桑名市から木曽川河口にかけては、中部地方を代表するリゾートエリアが広がる。
ナガシマスパーランドは日本最大級の遊園地で、隣接する「なばなの里」では四季の花々と冬季イルミネーションが全国的な人気を集める。

さらに鈴鹿市には世界的に知られる鈴鹿サーキットがあり、モータースポーツ文化の中心地となっている。
鈴鹿サーキット
鳥羽市の鳥羽水族館は、展示生物種数が日本最多を誇る巨大水族館で、ジュゴンなど希少な海洋生物を見ることができる。

伊賀市では忍者の里として知られ、伊賀流忍者博物館が観光客に人気だ。
このように、三重県は古代信仰から近代娯楽まで、多層的な魅力を併せ持つ。
熊野古道に神々の息吹を感じ、伊勢志摩の海に心を癒し、長島で歓声を上げる。
そこには「伝統と革新が共存する日本の縮図」としての三重の姿がある。

(外部リンク)三重県のホームページ
(外部リンク)三重県観光連盟公式サイト「観光三重」

















