本州の最西端に位置する山口県は、海と山、そして歴史のロマンに満ちた土地である。
日本海と瀬戸内海、さらに響灘という三つの海に囲まれ、内陸にはカルスト台地や鍾乳洞といった独特の地形が広がる。
萩の城下町に代表される古き街並み、長門や下関の雄大な海岸線、そして明治維新の舞台となった歴史の香り──これらが共存するのが山口県の魅力である。
この記事では、世界遺産から天然記念物、百選に選ばれた絶景や温泉、名刹まで、山口県の観光地を網羅し、地図とともに詳しく紹介する。
山口県観光の魅力。世界遺産と絶景と定番と穴場。萩の歴史とカルストの絶景、角島大橋や青海島の青い海。名所名刹百選と温泉

世界遺産──萩に残る近代日本の原点「明治日本の産業革命遺産」
山口県には一つの世界遺産がある。
それが「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」だ。
2015年にユネスコの世界文化遺産として登録されたこの遺産群は、日本が西洋技術を導入し、近代国家へと成長していく過程を物語る貴重な証拠である。
県内では萩市に五つの構成資産が存在する。
まず「萩反射炉」は、鉄を溶かし大砲を鋳造するために建設された試験炉で、西洋技術を取り入れた国内初期の反射炉の一つである。
「恵美須ヶ鼻造船所跡」では、幕末期に日本人の手で洋式船を造ろうとした挑戦の跡を見ることができる。
「大板山たたら製鉄遺跡」は、砂鉄を原料とした日本古来の製鉄法“たたら”が近代技術へと変化していく過程を示す場所だ。

さらに、長州藩の城下町「萩城下町」や、吉田松陰が開いた「松下村塾」も登録対象に含まれている。
松下村塾は吉田松陰を中心に、伊藤博文や高杉晋作など明治維新を担った志士たちを輩出したことで知られる。
萩の町を歩けば、近代日本の胎動を今も肌で感じることができる。

名勝・天然記念物・日本百景──カルスト台地と海のアルプスが描く絶景
山口県は自然地形の多様さで知られる。
まず特筆すべきは、美祢市の「秋吉台」だ。
石灰岩が一面に点在する広大なカルスト台地であり、日本三大カルストの一つに数えられる。

地下には全長10kmを超える「秋芳洞」が広がり、鍾乳洞としても日本屈指の規模を誇る。
洞内には「百枚皿」「黄金柱」などの奇岩が連なり、まるで地底の宮殿のようだ。
秋吉台と秋芳洞はともに特別天然記念物に指定され、年間を通じて観光客が絶えない。

県北部の「青海島」(長門市)は「海上アルプス」と呼ばれる奇岩群の島で、長年の波浪に削られた断崖や洞窟が連続し、国の名勝および日本百景に選ばれている。
観光遊覧船から眺める海蝕の造形美は圧巻で、ダイビングの聖地としても知られる。

山口市と萩市にまたがる「長門峡」も日本百景の一つ。
阿武川沿いに続く約12kmの渓谷には、四季折々の彩りが映える。
新緑、紅葉、冬の雪景色と、季節ごとに表情を変える自然美は多くの画家や写真家を魅了してきた。

また、岩国市の「錦帯橋」は、国の名勝であり「日本三名橋」「日本三奇橋」にも数えられる木造アーチ橋だ。
五連の橋が錦川に優雅な弧を描き、春の桜や秋の紅葉と調和する姿はまさに芸術品である。
このほか、下関市の「狗留孫山」や「石柱渓」、萩市の「須佐湾」、長門市の「俵島」なども名勝に指定されており、山と海の両方の魅力を併せ持つのが山口の特徴である。

百選の絶景──桜、渚、滝、城に見る山口の四季
山口県には、全国の「日本百選」に選ばれた名所が数多く存在する。
まず「日本の渚百選」には、光市の「室積・虹ヶ浜海岸」と長門市の「青海島」がある。
室積・虹ヶ浜海岸は、2kmにわたって白砂青松が続く美しい浜辺で、背後のクロマツ並木が海岸線を彩る。
夏には海水浴や花火大会で賑わい、朝夕には瀬戸内の穏やかな光が砂浜を染める。

滝百選には、岩国市の「寂地峡五竜の滝」が選出されている。
五つの滝が段階的に連なるこの渓谷は、龍が舞うような水の流れからその名がついた。
透明度の高い水と深い緑の森が織りなす風景は、静けさと力強さを兼ね備えている。

桜の名所百選としては、岩国市の「吉香公園・錦帯橋」と宇部市の「常盤公園」が挙げられる。
吉香公園は旧岩国藩主・吉川家の居館跡に整備された公園で、錦帯橋との共演が春の風物詩となっている。

一方、常盤公園は東京ドーム約40個分の敷地に3,500本の桜が咲き誇り、湖畔に映る花影が見事である。
さらに、萩市の「萩城」は日本百名城の一つ。
慶長9年(1604年)に毛利輝元が築いた城で、明治維新後に天守は失われたが、石垣や堀、武家屋敷が当時の面影を今に伝える。

続日本百名城には山口市の「大内氏館・高嶺城」が選ばれており、室町時代の大内文化の中心地として歴史的価値が高い。
名刹と温泉──湯けむりと信仰が息づく山口の癒し
山口県は古くから温泉地としても知られる。
最も古い歴史をもつのが「長門湯本温泉」だ。
開湯は約600年前、応永34年(1427年)にさかのぼるとされ、音信川沿いに広がる温泉街は風情に満ちている。
夜には川沿いの提灯が灯り、幻想的な雰囲気を醸し出す。

ほかにも「俵山温泉」「川棚温泉」「湯田温泉」「一の俣温泉」など、個性豊かな湯処が点在する。
湯田温泉(山口市)は“白狐の湯”とも呼ばれ、美肌効果が高いアルカリ性の湯として人気がある。
俵山温泉は昔ながらの共同浴場文化が残り、湯治客に愛され続けている。
宗教的名所として有名なのが長門市の「元乃隅神社」だ。
朱色の鳥居が123基、海岸線に沿って100メートル以上連なる光景は圧巻で、近年は海外からの観光客にも人気が高い。
日本海の碧い海と鳥居の赤が織りなすコントラストはまさにフォトジェニックな絶景である。

また、下関市の「角島大橋」は、エメラルドグリーンの海に伸びる直線の橋として知られ、自動車のCMや映画にもたびたび登場する。
橋上から見る景観は息をのむほど美しく、山口県を象徴する新しい名所となっている。

その他の見どころ──萩・下関・防府、歴史と文化の交差点
萩市は武家屋敷や白壁の町並みが残る城下町であり、「萩城下町」「松陰神社」「旧厚狭毛利邸」など見どころが多い。
萩焼や夏みかんなど、伝統工芸と特産品も豊富である。
下関市は本州最西端の地で、壇ノ浦古戦場や赤間神宮など、源平合戦や維新の歴史が息づく。
唐戸市場では新鮮なフグや寿司が味わえる。
防府市の「防府天満宮」は、太宰府と並ぶ天神信仰の中心地で、学問の神・菅原道真を祀る。
春の梅まつりや秋の大祭は多くの参拝者で賑わう。

このように、山口県は自然・文化・歴史のすべてを内包した“日本の縮図”ともいえる地だ。
海と山、静寂と躍動、古代から近代までの時間が交差するこの土地を歩けば、誰もが心の奥に残る風景と出会えるだろう。

















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